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エレクトリックシャワー

ブラジルの思い出にエレクトリックシャワーがある。ハーフガードから掛ける技のエレクトリックチェアーの話ではない。20年くらいその事について忘れていたが、ふとしたタイミングで先日思い出した。そしてググってみたら出てきた。懐かしい。

2000年代のブラジル修行時は、にわかには信じられない話かもしれないが、ホテルはブラジルに到着してから飛び込みで探していた。空港からコパカバーナ大通りまでタクシーで移動し、重いスーツケースを引きずりながらホテルを何件か回った。

ブラジルの仲間からは、かなり危険な行為だとあとから言われた。よく強盗にあわなかったなと。ただ、予約サイトとかもなければ、インターネットの普及もこれからという時代に、日本からの個人旅行者が現地の格安ホテルを予約する方法が思い当たらなかった。

大会期間中はホテルに滞在し、終了後、今度は長期滞在するための安いアパートを探して移動するのだが、それもその辺の不動産屋に飛び込んでカタコトで交渉する。最初に借りた部屋のことは今もよく覚えている。間取りは1Kで家賃は月800レアル。当時のレートで40,000円くらいだ。

借りたアパートは、コパカバーナの東の端、ボタフォゴまでは行かないくらいの立地だった。当時イパネマにあったアリアンシまでは、バスで40分の距離。通学時間は掛かったが、翌年度以降もそのエリアに陣取った。家賃相場が安いエリアだったのだ。

ちなみにリオデジャネイロのグアナバラ湾の西側エリアには、

イパネマにはアリアンシ、
コパカバーナにはデラヒーバやカーソン、
ウマイタにはホイラー、
ボタフォゴにはノヴァ・ウニオン、

そのような感じで代表的なアカデミーが分布していた。グレイシーバッハがあるバッハダチジューカはリッチなエリアで、私が例年滞在するエリアからは大分離れた場所にあった。

話を戻そう。ブラジルで借りた初めてのアパート、そこで初めて私は「エレクトリックシャワー」の洗礼を受けた。感電死しかねない危険なシャワーだ。ブラジル以外の国ではその後も体験することがなかった。

詳細はこのリンク先の体験レポートでよく分かる。共感することしかない。
https://vento-do-brasil.com/burajiru-shower-enjyou-kanden
※画像も引用させていただきました

私が住んだブラジルの部屋の多くは、シャワーがガス湯沸かし式ではなく、貯湯式でもなく、電熱線で瞬間的に水を温めるという方式だった。熱いお湯などもちろん出ないし水圧も弱い。正確には、水圧を強くすれば温度が下がり、弱めると多少高くなる。

言葉の分からない異国の地で、道場から深夜のアパートへ帰った時、孤独と疲労と寒さに打ち震えた体を、温かいシャワーで癒やすことができない日々は辛かった。

ブラジルの冬の夜は寒い。チョロチョロと出る生ぬるいシャワーを浴びると、湯上がりはむしろ体が冷えてしまった。なんとか限界まで熱いお湯を出そうと、シャワーの温度ダイヤルに手を伸ばすと、罰ゲームのビリビリを喰らい、しばらく動けなくなる、そんな日々を繰り返した。

修行3年目以降くらいからは、多少金額は上がっても、不動産屋には「ガスシャワーのある物件」を必ずリクエストした。「変なことにこだわるね?」という表情をいつもされたが、ガスシャワー設置のアパートもちゃんとあり、それからは充実した生活を送れるようになった。

ガスは、懐かしの昭和の湯沸かし器みたいなのに、自分で火を付けるタイプのやつだ。ガスの栓を開いて、火を付けたマッチを穴に突っ込んで着火し、使用後は毎回消さなきゃいけないやつ。燃えてくれた種火のなんと頼もしいことよ。ブラジルのあの灯火は今も忘れられない。

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