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早川総代表のコラム

試みの柔術地平線3「逆算的柔術技法」

By | 池袋 | No Comments

逆算的柔術技法。

フィニッシュをイメージし、そこから逆算して必要な手順を踏む。

いわゆる何手先を読むという話は、実際にはこの逆算作業に他ならない。

この動画であれば、まずキムラグリップに対してストレートアームロックを合わせることを早めにイメージする。

そのためには、自分のテクニックのアーカイブから、今の状況に適用できる技を、瞬時に選択するスピードが求められる。この作業が全体の重要度のおよそ8割と考える。

で、そこから、

あの技を発動すためには相手の体の正面からキムラの仕掛けを受ける必要があるな

今のシチュエーションはちょっと違うな、なので正面側へ移動しよう

相手を乗り越える必要があるので、途中で足を絡まれたらむしろピンチになるな

よってフットワイプを使おう。

相手の正面側で一度止まると、キムラでやられるか、警戒してキムラをやめられちゃうから、体を乗り越えた瞬間にもう半周廻ろう

1~2秒でここまで考えたら、ニーオンベリーを置きにいく動作から実行し、あとは体にまかせる。

逆算的柔術技法は人生にも通ずると考える。

ゴールを決めて、そこへたどり着くためには何が必要なのかを考え、勉強し、行動する。

ゴールがフィニッシュ、勉強がテクニックの習得、行動がスパーリングであろうか。

想定外のリアクションが起きた時、そこからのアレンジ能力も求められる。これは型稽古だけでは身につかない部分だ。スパーリング、すなわち行動と経験あるのみ。

試みの柔術地平線2「セルゲイ・ベログラゾフ」

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ファビオ・グージェウのレアな教則本。リオデジャネイロの路上のキオスクで売られているのを偶然見つけて購入した

現役時代、私は23時頃に道場をあとにし、そこから石川さんとサイゼリヤで飯を食い、朝方5時頃にようやく就寝し、昼12時に起きてパラエストラ昼柔術の13時からの練習へ向かう、というサイクルを4年ほど繰り返した時期がある。

昼から夜までずっと柔術の練習や指導をしていると、深夜1時くらいからがようやく自分の時間となる。これは職業柔術家あるあるではないだろうか。

1人の時間になると、まず録りためていたビデオを見ていた。当時は「ガキの使い」、「太田光の私が総理になったら」、「細木数子のズバリ言うわよ」等が好きだった。それらを消化したあとはテレ東の外国の通販番組を永遠に見ていた。

それも一段落したら、朝方までは柔術の研究だ。といっても資料は限られていた。柔術の資料は、海外遠征の度にバックナンバーを大量購入しておいたTATAMEやグレイシーマガジンが重宝していた。そこに少しだけ載っているテクニックコーナーの切り抜きがメインで、それらをスクラップする作業も日課だった。

その他は、国会図書館で探し出してコピー&スクラップしていた、古流柔術や古い柔道の資料ばかりだ。高専柔道の真髄なども、今でこそ復刻版が手に入るが、当時は国会図書館で全てコピーするしか手に入れる方法はなかった。

そうやって自分で集めたあらゆる資料を読み込み、夜な夜なノートにまとめていた。そして静かに目を瞑りイメージトレーニングをするわけだ。イメージトレーニングをしていると全身が汗だくになる。人はスクワット2000回やらなくても、シャツはびちょびちょになり、額から汗がこぼれ落ちることを知った。

柔術系のVHSのダビングも徐々に出回り始めた。初期ではカゼカ・ムニエスとファービオ・グージェウの教則が、多くの柔術家にとっての聖典だったのではないか。

教則の元祖ともいえるホリオン&ホイスの教則ビデオは、1本1万円くらいして、当時は購入するお金がなかった。海外通販になるので購入方法もよく分からなかった。かなり後になってからこれらを視る機会に恵まれた。

そしてセルゲイ・ベログラゾフの教則ビデオが思い出深い。日本ではあまり知られていないが、歴史に残る偉大なレスラーだ。トオルさんが貸してくれたビデオをダビングしたのだが、全編ロシア語と英語の同時音声で、収録時間が12時間くらいの超大作だった。

眠い目をこすりながらそれを見続けることはとてつもなくしんどかった。眠くなるなんてもんじゃない。夢の中までロシア語が出てきた。しかし毎日がんばって見続けてノートに技を書き出した。

結局、柔術に役立ちそうなものは何でも漁って見ていた。そんな時代だった。

ファビオ教則本の中身。もちろん全編ポルトガル語。

私が視ていたセルゲイの教則は、今ではYouTubeで視ることができる。

試みの柔術地平線1「ベリンボロ柔術」

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不沈艦 スタン・ハンセン選手

クラシカルなプロレスが遠い過去のものとなって久しい。今は影も形もなくなり、ラリアットプロレス(※)へと変化した。

柔術はどうだ。グレイシー柔術はベリンボロ柔術へと変化した。

若い入会希望者に我々のスポーツを見せた時「これは一体何のために何をしているんだろう?」という動作やポジションが極端に多くなり、理解してもらうことが以前より難しくなった。

ではグレイシー柔術時代の説明は楽だったかといえば、それはそれでまた大変だった。既知の武道や格闘技のイメージと先入観があり、どちらが攻めているのかすら説明に窮したものだ。

「何のために何をしているのかよく分からない」

これはスポーツへと昇華した武道に限った話ではない。ゴールに玉を入れたらなぜ得点なのか。棒で打った玉がスタンドに入ったらなぜ得点なのか。それらの全てに「だから何なの?」と言われてしまうと元も子もない。

何か本来の意味があったのかもしれないが、その意味は長い時間を掛けて形骸化していくものだ。そして大半の人にとって、もはやそれはどうでも良いことになる。

これを進化と捉えるか、退化や劣化と捉えるかは、それぞれの視点や立場によって異なる。とにかく「変化」し続けていることだけは間違いない。

※序盤から大技を連発して頭から落としまくるプロレス

 

やりすぎ柔術都市伝説1

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ポルトガル語では、アームロックはシャベ・ジ・ブラッソ、フットロックはシャベ・ジ・ペと呼ばれています。シャベは直訳すると削るですが壊す的な意にもなり、ブラッソは腕、ペは足です。

膝はジョエリョなので、ニーロックはシャベ・ジ・ジョエリョになるとか、法則が分かると何でもここに当てはめられます。(※20年経ったので名称等は新たなスタンダードが出来ているかもしれません)

それで、今はどうか知らないのですが、まだブラジルで足関節技があまり普及していなかった頃、トーホールドだけはマタレオン・ナ・ペと呼ばれていました。この名称だけ法則的には意味不明でした。

2006年頃のCBJJのルールブック初稿において、白~紫帯までの禁止技リストにこのマタレオン・ナ・ペが載っていました。そして英語への翻訳版には、Choke with legs的な記述がありました。

柔術界隈では、ポルトガル語のマタレオン=ライオン殺し=リアネイキッドチョークということは知られていたので、ポル語版と英語版のルールブックを見比べて精査した結果、これは足によるマタレオン、すなわちヘッドシザースのことだったんだなと私は解釈しました。

よって当時のBJJFJ(現JBJJF)審判部長として、日本語版ルールブックの作成に当たり、ヘッドシザースを白~紫帯の禁止技に加えました。これが世にいう「日本では洗濯バサミが一瞬だけ禁止になった期間がある」にまつわる都市伝説の真相です。

しかし単純に頭を両足で挟む行為を禁止技にしてしまうと、ちょっとしたことで反則が多発しまいます。そこで私の脳裏にある推理がよぎりました。マタレオン・ナ・ペにおけるマタレオンは、チョークのことではなく、腕を四の字に組む形のことを言いたかったのではないかと。トーホールドという技に対する適当な名称がまだなかったので、足首にリアネイキッドチョークを掛けるような様からこの言葉が当てはめられたのではないかと。

その後の調査でどうやらそれが真相であることを確信し、間違った解釈で運用していたルールを改めることになったのですが、一度広まってしまった解釈を是正することは容易ではなく、ヘッドシザースは合法というところまで世間の理解を引き戻すのに結構な期間を要しました。

ほろ苦いミスの一つでした。言い訳となってしまいますが、CBJJルールブック初稿の翻訳作業は、滝川先生(現JBJJF副会長)を介してのブラジルサイドとのやり取りを含めてかなりしんどい作業でした。ポル語版と英語版にもかなりのずれがあり、それらを見比べての解読作業に取り組みました。もちろんプロの翻訳業者にも依頼しました。

マタレオン・ナ・ペについては、英語版を作ったグループも、その方向性を踏襲した私も、先入観を持ったまま理解し、突っ込んだ質疑応答の機会をブラジルサイドと持つことがなかったことが間違いの原因でした。その後の作業の教訓となりました。

クロスチョーカー

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チョークのお話。

私は基本パサーだったので、試合で対戦相手をバックチョークで仕留めた記憶が実はほとんどありません。今も心残りです。

ガードやトップからは、クロス(十字絞め)はもちろんのこと、意外とやりそうもないフロントループ(小手絞り)やクロスボディカラー(帯取り片手絞め)も決める機会がありました。しかし私の攻撃スタイル的に、バックコントロールにたどり着くことが極端に少なかったです。

さて、ガードからのクロスチョークは、多くの方が実際に決めるのは難しい技だと感じておられるのではないでしょうか。どこのアカデミーでも初日に学べる技なのに、あれほど決まらない技はないのではないかと(笑)。

本気でポスチャーアップして抵抗する相手を下から仕留めるには色々とコツが入ります。以下は澤田の試合での実例です。

万力のような握力さえあれば良いというわけでもなく、掴む位置や、タイミングや、こちらの仕掛けを悟らせないための工夫が必要です。

あとはそうですね、執念ですかね(笑)。

おまけのサワダチンSAWADATINE

SAWADAに黒帯一段を授与

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澤田伸大に黒帯一段を授与しました。

黒帯を授与してからあっという間の3年間でした。

SAWADAの前に澤田なく、澤田の後にSAWADAなし

この言葉は100年後のトライフォースにおいても語り継がれる伝説となるでしょう。

意味はよく分かりません。庄原さん考えといて下さい。

澤田は私の夢を、トライフォースの夢を、 先陣を切って叶えてくれた男です。

IBJJFアダルト黒帯ノーギ部門において、 日本人初の世界王者となってくれました。

なるべくしてなった男です。

澤田らしいエピソードを一つ書きます。

黒帯を授与した翌日、 私のベーシッククラスにはいつもと変わらず澤田の姿がありました。

そして誰よりも食い入る目つきで私のシザースイープの所作を学んでいました。

何かを狙ってとか、格好つけてとか、全くそういうのでもなく、自然体でその場にいる男です。私が今もベーシッククラスを指導していたなら、きっと参加しているでしょう。

人が誰かを応援したくなるのには必ず理由があります。

澤田はこれからも私の希望です。次の目標に向かって邁進して欲しい。

しかし事務所に二人きりの時の澤田は怖すぎます。 もう少し笑顔をちょうだい。

女性初の認可インストラクター

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芝本さおりが認可インストラクターの資格を取得しました。女性としては初です。

トライフォースにはみなしのインストラクターはおらず、カリキュラムを指導するためには黒帯であってもトレーニングコースを受講する必要があります。彼女はネイビーシールズよりもキツイとされるそれらの訓練を経て、早川の直接審査の後に資格の取得に至りました。

すでに高いレベルのインストラクションスキルを身に着けており、どこへ出しても恥ずかしくないレベルに達しています。ハードルを上げてしまって申し訳ないのですが、あえて言いたい。インストラクターとしての素晴らしい素養を秘めていると。

ただし、それは技を正確に伝えるというスキルの部分においてです。インストラクターとしての統率力、包容力、総合的に求められる様々な力は、現場で場数を踏み、多くの生徒を指導し、またその生徒たちを高みに引き上げてあげることによってしか身につけることが出来ません。

教えることの楽しさを知るのは良いことです。しかし教え好きが必ずしも有能なインストラクターであるとは限りません。人を指導するということは、時には辛く苦しい作業も伴います。それだけ責任のある立場だということです。

その責任感を自分の力に変えて、今後も柔術家としての研鑽を続けて欲しいと願っています。早川よりの手向けの言葉でした。

本気と書いてマジと読む

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上級者から技を引き出す。成長のためにこれほど有効な練習方法はありません。

といっても初心者には難易度が高いと思いますので、初心者は普通に先生に”受けて”もらうだけで十分です。

よってこれは、上級者が超上級者の技を引き出すための練習方法と言えるかもしれません。

簡単な例でいえば、古くはトオル先生の時代から、芝本や山田、澤田に至るまで、おそらく最近彼らがはまってるんだろうなという技、あるいは誰かにやられて嫌だったんだろうなという技を、よく私に掛けてきました。

早川先生ならこの技にどうやって対応するのだろうか?という部分を引き出すにはこれがてっとり早いです。自分の技の穴が見つかり、誰かにやられた技への対処法がすぐに分かります。

掛ける側も掛けられる側も、技自体は本気で掛けて、本気で防いでいるので、ライトスパーであるとか、お互いの技を受け合ってるとか、そういうことでもないです。

「あらゆる局面をあえて練習している」という意味では、本気ではないという見方も出来ます。

この概念は説明するのがちょっと難しいのですが、ようするに”本気で試す練習”をしているのだと思います。

私も修行期には、海外で高名な先生と手合わせする機会を得た時は、確実にそのようにしていました。勝つためだけの練習はしません。

誤解を恐れずに言えば、どうせ勝てるわけないですし、短い練習時間の中でどれだけ相手の技を引き出せるかが鍵となります。

フォースのバランス

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柔術において何かと議論の対象となる帯の昇格基準について。私がこれまでの25年間、柔術界を見てきて分かったのは、

「◯◯さんは技を何も知らないのに強いから帯をもらえた。」

「◯◯さんは弱いのに技だけは知ってるから帯をもらえた。」

と主張し合う2つのグループがあるということです。

この戦いがジェダイとシスばりに永遠に続いていると感じます。

「強いけどテクニックがない」と「テクニックを知ってるけど弱い」

この2つの概念、いえ教義は、お互いの存在を問題視しています。

他競技の出身者で、もともと強くて試合で勝ちまくって帯昇格した者にも、容赦なく類似の批判が向けられます。

「◯◯さんは柔道の技で勝っただけ、なんで帯が上がるの?」と。

確かに一理あります。そう考える人達がいるのも無理はないです。

私はその長きに渡る戦いに終止符を打つために、強く、かつ柔術のテクニックを備えた者にのみ帯を授与する制度を考えました。

テクニック検定はそのソリューションの一つです。もちろん、強さの評価を完全に客観的に行える制度は、いまだ導入できているわけではありません。非常に難しいです。

ただしトライフォースの場合、長い歴史により全年齢、全帯に必要十分な会員数が存在するので、会員同士の実力の比較による相対的評価が高い精度で行えるようになりました(トライフォースの帯なので、他流派との比較はこの際考えないものとします)。

また「◯◯さんは全然クラスに参加していないのに試合の実績だけで帯をもらえた」と主張するグループもあります。

一方で「◯◯さんは確かにクラスにはまじめに出ていない。しかし実力もテクニックも申し分ない。何か問題ある?」というグループもあります。

これは流派ごとの「道場論、道場観」にも関わってくる話なので、一概に肯定も否定もできませんが、私は前者の主張に一理あると考えます。

そこで導入したのが出席日数をカウントする制度です。

まとめますと、平素のクラスへの参加を疎かにせず、柔術のテクニックをしっかりと身に付け、会員同士の実力の比較により相対的に強い者であること。これが現在の私の帯授与における判断基準になっています。

無視できないリスク

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基本中の基本技、フレームによるヘッドロックの解除とアームロックのシーケンスです。

私が指導しているフレームの作り方にも、一つエピソードがあります。

15年くらい前までは、私は手をパー(開手=かいしゅ)にして相手に押し当てていました。しかしロサンゼルスのグレイシー柔術アカデミーを訪れた時に、そこでの練習の際にフレームにおける開手について指摘されました。

「その手はオープンハンドにしては駄目だ。無我夢中の相手がとっさに指を掴んで捻ってきたら折れてしまうよ。」と言われました。

その日以来、私もフレームでは拳を固めるように改めました。実戦うんぬんを抜きにしたスポーツ柔術の練習においても、不要な突き指等を避ける効果があるかなと思いましたので。

組技を究めていくと、開手の方が力が入る技かそうでないかは感覚的に分かります。しかしグレイシーでは拳を作る技が結構あります。簡単なリストリリースの時もそうです。

私は「なんで開手でやらないんだろう?」とずっと思っていたのですが、そんな理由があったんだなとその時に改めて納得しました。力の効率性と天秤に掛けても、無視できないリスクがそこにあった訳です。

そんなエピソードでした。

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